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狂犬病

狂犬病の動物に犬がかまれると、唾液(だえき)に含まれるウイルスが傷口から体内に侵入し、脳や脊髄、眼球、神経などをむしばんでいく。そして1,2週間の潜伏期ののち、それこそ狂ったように、人でも犬でも物でも何にでもかみつく狂躁期に入る。そうなれば、誰でも狂犬病とわかるが、厄介なのは、それ以前の潜伏期にも唾液にウイルスが混じっており、かみつかれれば感染することだ。だから、感染地帯では、犬にかまれれば、まずこの病気を疑わなければいけない。疑いが晴れるのは、かんだ犬を隔離して10日たっても発症しないことが実証されたとき。それまで、人間にも予防ワクチンを毎日打ち続けて体内に免疫ができるのを待つだけだ。毒ヘビのような血清はない。

さて、狂躁期は2週間前後続く。それが過ぎると、麻痺(まひ)期に入る。神経系統がマヒして体は動かず、食物も飲み物も、そして唾液すら飲み込むことができずに弱り果て、死に至る。ほんとうに悲惨な病いである。

なお、狂犬病の別名は、「恐水病」という。それは、この病いにかかった人間が水を飲もうとしてもどうしても飲めず、震えがきて、まわりから見ると、あたかも水を恐がるようであったことによる。 哺乳類すべてが感染するこの病気を「狂犬病」というのは、犬が最も人間社会に身近な動物で、人々への影響力が大きいためだ。猟犬なら、野性動物と接触する機会も多く、感染もしやすい。飼い犬が感染すれば、言うまでもなく、最大の被害者は飼い主家族である。飼い主ならだれでも、わが家の愛犬が自分たちをかむなんて夢想だにしない。

愛犬のため、家族、隣人のため、さらには世の中の人と動物すべてのために、毎年一度は必ず予防接種をする。それが飼い主すべての義務である。狂犬病は4 類感染症全数把握疾患に定められており、診断した医師は7 日以内に保健所に届け出る必要がある。


世界の狂犬病発生状況

世界保健機関(WHO)によると、全世界で毎年3万5000〜5万人が狂犬病によって死亡しており、アジア、アフリカ等では狂犬病の犬から感染した患者が多く発生している。しかしながら、日本での狂犬病は1970 年にネパールで感染し死亡した症例以外には、1957年以降発生していない。その最大の要因はイヌへのワクチン接種および検疫制度によると同時に、わが国が島国であるということである。

世界のなかでは狂犬病が根絶された地域はオーストラリア、イギリス、台湾、ハワイ、日本等と島国に限られていた。しかしながらイギリスでは1996 年にコウモリの狂犬病が見つかり、またユーロトンネルの開通でフランス等からの狂犬病の侵入がおそれられている。またオーストラリアのコウモリ(fruit bat)から狂犬病に類似したAustralian batvirusが分離され、そのウイルスによる患者が1996年に報告された。2002年にはイギリス国内でコウモリからこのウイルスに感染した人が死亡している。こうしたウイルスによる狂犬病様疾患またコウモリによる狂犬病があらたに注目されてきている。

狂犬病ウイルスおよびその関連ウイルスはリッサウイルスと称される。


図1. 世界における狂犬病の分布(2002年、WHO 報告)


臨床症状

感染から発症までの潜伏期間は咬まれた部位等によってさまざまであるが、一般的には1〜2カ月である。発熱、頭痛、倦怠感、筋痛、疲労感、食欲不振、悪心・嘔吐、咽頭痛、空咳等の感冒様症状ではじまる。咬傷部位の疼痛やその周辺の知覚異常、筋の攣縮を伴う。脳炎症状は運動過多、興奮、不安狂躁から始まり、錯乱、幻覚、攻撃性、恐水発作等の筋痙攣を呈し、最終的には昏睡状態から呼吸停止で死にいたる。狂犬病は一度発症すれば、致死率はほぼ100%である。

ヒトからヒトへの狂犬病の感染例は、狂犬病患者からの角膜移植を除いて報告されていないが、狂犬病を疑われる患者が発生した場合、患者に直接接触する医師、看護師等の医療従事者は接触予防に十分注意を払い、狂犬病と確定された場合には、直ちに暴露後免疫を受ける必要がある。


治療・予防

海外、特に東南アジアで狂犬病が疑われるイヌ、ネコおよび野生動物にかまれたり、ひっかかれたりした場合、まず傷口を石鹸と水でよく洗い流し、医療機関を受診する。狂犬病ワクチンと抗狂犬病ガンマグロブリンを投与する。狂犬病は一旦発症すれば特異的治療法はない。このためできるだけ早期に、ワクチンと抗狂犬病ガンマグロブリンを投与する必要がある。

ワクチンとしてはヤギ脳由来で不活化したセンプル型のワクチン、乳のみマウス脳由来で不活化したフェンザリダ型のワクチン、組織培養ワクチンとして、フランスのヒト二倍体細胞ワクチン、VERO 細胞ワクチン、ドイツと日本で製造されているニワトリ胚細胞のワクチンがある。動物脳由来ワクチンは、副反応が組織培養のワクチンより強いので避ける方がよい。しかし、開発途上国ではいまだにセンプル型しか入手できない国もある。また、ガンマグロブリンはヒトとウマの2種類の製剤があるが、ウマの製剤は2001年に製造が中止され、入手困難となっている。国内では抗狂犬病免疫グロブリン製剤は承認されていないので、入手はほとんど不可能である。

(国立感染症研究所ウイルス第一部 新井陽子)より抜粋

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